蘭学事始 - 37

一、桂川家のことは前にもいへるごとくなり。甫周君は抜群の俊才ゆゑ、凡そ和蘭のことにもほゞ通じ、その名声四方に走せ、尤も常にその業事の趣きは、公上にも知ろし召されしことなれば、時々西洋筋のことは和解御用も命ぜられし趣きなり。その草稿その家には有るべし。和蘭薬撰、海上備要方などいふ訳説の著書ありと聞けども、未だ成就の書を見ず。年いまだ六十に満たずして、千古の人となり給へり。