蘭学事始 - オンライン読書
蘭学事始 - 36
一、石井恒右衛門は長崎旧の訳官馬田清吉といふものなりしが、その家業を他人へゆづりて江戸へ来り、天明の中頃、白河侯の家臣となれり。侯そのはじめを知り、ドドニュース本草を和解せしめ十数巻の訳説成れり。その業を卒へずしてこれまた異客となれり。稲村某といふ男取り立てしハルマ和解の書は全くこの人の力によれり。この訳書は近来初学稽古の人々考閲の益ありといふ。この人もとの職業を以て仕官すべしとて東下せしにはあらねども、かくの如く隆盛の中へ来りしことゆゑ、専らこの道の助けとなりたり。
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