蘭学事始 - 10

一、またその後山形侯の医師安富寄碩といふ者、麹町に住まひたり。この男長崎に遊学し、かの地にて二十五文字を習ひ且つその文字にていろは四十七文字を綴り合ひしを認め貰ひ帰り、人に誇りてかの書籍も読み分くるやうにいひ触らせしを、翁なども珍しきことに思ひたり。同藩中川淳庵などは、麹町に町宅してありしが、この男より和蘭文字を初めて習ひしなり。