蘭学事始 - 09

一、しかれどもその頃はわけて常人のみだりに横文字を取扱ふことは遠慮せしことなり。すでにその頃本草家と呼ばれし後藤梨春といへる男、和蘭事の見聞せしを書き集め、紅毛談という仮名書の小冊を著し、開板せしに、その内にかの二十五文字を彫り入れしを、何方よりか咎めを受け、絶板となりたることもあり。